今わたしは下北沢に住んでいる。下北沢は飲兵衛の街。住んで5年が経つので、気づいたら結構な数の飲み友ができた。
最初に2人の男友達ができた時は、これからの生活が楽しくなりそうだとワクワクしたものだ。
そういえば、とある道なりに3人の間で「三権分立」と呼んでいる場所がある。
これはただ道が三つに分かれた分岐点なのだが、みんなで飲んでいると、楽しくていつまでもダラダラと話してしまうので、三権分立スポットでビシッと解散するのだ。
そして3人はそれぞれの家へと帰る。
友達との出会い
偶然出会った気の合う3人は、その後飲みまくることになる。
終電後もケロッと飲んでいる人々は大抵近所に住んでいる。歩いて帰れるから電車を気にする必要がないのだ。
飲兵衛のまわりには飲兵衛が集まるので、さらに出会いは広がった。
ここで、歳の近い女友達2人とも出会い、かけがえのない友達になった。(これが後の自称下北沢のチャーリーズエンジェルである。)
かなりの頻度でみんなと会っていたらコロナがやってきた。
コロナ禍とご近所さん付き合い
今となっては街中でマスクをしている人も少なくなったが、4年前は外出することが憚られる世の中だった。
社会や人とのコミュニケーションが減る中で、さっと気軽に集まれる存在の結束力は強くなっていったのではないかと思う。
コロナになった友達に食料を届けたり、実家から送られてきたみかんをもらったりと、ご近所さんとして色々助け合ったりもした。
営業を再開したお店で飲んだり、誰かの家で桃鉄をしたりとこっそりと遊んでいたこともある。
コロナの収束とともにさらに友達は増え、毎月誰かしらの誕生日を祝ったり、7人で旅行に行ったりと気づくと下北沢の飲兵衛コミュニティは大家族のような状態になっていた。
そして、出会う人の人数が増えてくると、それぞれ会う人が細分化されていった。
特にケンカしたわけではないけど、会わなくても友達は友達だ。そんなわけで、初期メンの3人で飲んだりすることはほぼなくなっていた。
ラーメン屋での遭遇
この間、ひとりカウンターでラーメンを食べていると、たまたま隣の席に初期メンの男友達1人がやってきた。
バッタリ人に遭遇して喜んでいたのだが、彼はどうやら何か言いたげな様子だ。一体何なのだろうと話をしてくれるのを待ったら、ようやく口を開いた。
「実は今月引っ越すことになったんだよね。」
ええ〜!!
ついに。ついにこの時がきたか。
下北沢とわたし
下北沢に越してくる前、わたしは大人数が住むシェアハウスに住んでいた。すごく楽しくて、時間が経つのがあっという間だった。
それは竜宮城に近い感覚だ。竜宮城にいると楽しくて居心地がいいけど、その間に他のみんなは着実に人生の駒を進めている。竜宮城をでた時には「玉手箱をぽんっ!」の状態になるのでは…。
ここは一生いる場所ではない。そう思い、わたしはシェアハウスを出ることにした。
そしてやってきたのが下北沢だ。本当は代々木上原に住みたかったけど、値段が高すぎて住めなかったので下北沢になった。
シェアハウスが竜宮城だとしたら、下北沢は沼だ。
のんびり過ごしていたら、あっという間に5年も経ってしまった。竜宮城を抜け出してやってきたのが沼だったとは…。もはや両足がズブズブに浸かってしまっている状態だ。
そんな風に感じていた最中に聞いた引越しの知らせだった。
5年間がだらりと続いてきたので、誰かがいなくなることはあまり想像していなかったのだけど。永遠なんていう言葉はやっぱりなかったようだ。
can you keep a secret
どこに引っ越すの?と聞いたら「旅に出る!」とのこと。
フリーランスのデザイナーなので、どこからでも仕事はできるという。ADDressという住まいのサブスクを使って日本中を旅するそうだ。旅人になるのか〜。
彼はみんなには自分の口から言いたいので、まだ内密にしておいてほしいと言った。
ふむ。。言いたい気持ちは山々だったが、秘密は守らねばならない!
焼き鳥屋さんのイベント
一週間後。いきつけの焼き鳥屋さんでイベントがあった。
焼き鳥屋にくるお客さんが歌ったり楽器を演奏したり、DJをしたりするのだ。
催し物のトップバッターはもう一人の初期メンだ。オリジナルソングを歌っていたのだが、なんというか、味がある感じの歌とギターだ。大声で無邪気な感じだ…!
それを旅立つ友達は神妙な面持ちで眺めている。
下北沢のチャーリーズエンジェルのキャメロンもバンドを組み、サックスを披露していた。オリジナルソングの曲名は「飲酒と睡眠」「社会不適合者の歌」など。こちらも中々クセのある演奏だ。
みんな絶妙なメロディーで一生懸命演奏したり、歌っている。
旅に出ることをこれから言う友人と、今まで練習してきた歌や曲を一生懸命披露する友達。
その空間に平和で陽気な時が流れていただけに、わたしはなんだか泣きそうになってしまった!
で、ちょびっと泣いてしまったわけだが、配られてきたクライナーを飲んだら酔っ払ってしまい、その日は終了してしまった・・。
どうやら彼はちゃんとみんなに打ち明けることができたようだ。
最後に
わたしは改めて、見送りの方法を考えてみた。
旅人になるのだから荷物は少ない方がいいだろう。せっかくだから喜んでもらえるようなプレゼントを渡したいな。そうだ!
わたしは似顔絵のTシャツを作ることにした。
似顔絵の本人がそのTシャツをきていたら、羞恥心はあるだろうが、旅先でも話のタネにはなるだろう。
急ピッチで手配し、できたTシャツがこちらだ。(自分で言うのもなんだが本人にはかなり似ている)
旅立ちの前夜は初期メンの3人でお食事会をした。2次会の焼き鳥屋さんで他の友達とも合流し、急いで進めた割には充分見送ることができたのではないだろうか。
「今はとっても悲しいけど、喉元過ぎれば暑さ忘れるだよ!」と言って見送った。
さようなら相馬さん。達者でな!
まとめ
人はなぜ出会い、別れていくのだろう。そもそも何のために生まれて何のために死んでいくのだろうか。
考えたけどわからなかった。
もしかしたら人生は「お絵描き」と似ているのかもしれない。
別に理由はないし、後でなくなってしまうけど、そこに白いキャンバスがあるから好きな色で好きなように絵を描いてみる。そんな感じなのかもしれない。
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