近年、下北沢は街の再開発で新しい商業施設が続々と誕生しているが、再来年にはバスロータリーもできるらしい。
下北沢には今すきまがある。工事中の駅前には、塗り立てのアスファルトが続き、駅からオオゼキというスーパーまで、何もない道なりが続いているのだ。
この道なりには途中喫煙所があるためか、夜になると若者たちがしゃがみ込み、歌ったり缶ビールを飲みながらたむろしている。
わたしは民度が低いなぁと思いながらも、どこか目を細めて道を通っている。自分も学生時代は明け方になるまで下北で遊んでいた。彼らは長い人生の中のほんの一瞬の青春時代を今ここで過ごしているのだろう。
バスロータリーが完成したら下北沢はさらにキレイな街並みになるに違いない。ふと、工事が終わったらここにいる若者たちはどこへ行くのだろうかと思った。
10年前の下北沢
そういえば、ずっと前下北沢には市場があった。狭いエリアに多くのお店が並び、吉祥寺のハーモニカ横丁のような雰囲気だった。「近道はこちら!」と駅までの道順を伝える看板があってなぜかわくわくした。
開かずの踏切もあった。不便だったけど、ちょっとした名物だった。
下北沢にいる人は、ものすごく派手な髪色をした人や、ヘンテコな洋服を着ている人など。この街以外では見かけないような人々がうようよしていた。
今でも人は多いし、街は音楽と演劇と古着で溢れていて、カルチャーも健在だ。でも、あの目を引くような個性を放つ人たちは一体どこへ行ったんだろうか。
下北沢は今も昔も楽しい街だけど、何かが変わった気がする。そう、下北沢は変化し続ける街だ。
変化する街
タピオカ屋が流行ったと思えば、今は古着屋ブームに回帰。新しいお店ができては潰れ、また新しいお店ができる。もちろん何十年も続く定食屋さんや飲み屋もたくさんある。
下北沢に引っ越した時に、初めて通うようになったのは808ラウンジというバーだ。店内はピンクや緑のネオンライトで照らされていて、ちょいワルの雰囲気が漂うお店だ。
ウノさんというロン毛のおじちゃんがマスターをやっていたのだが、ウノさんが作るモヒートはミントたっぷりで世界一美味しい。来るお客さんも映画監督やバンドマンなど、個性的な人が多く、パンチの効いたお店だった。
でもコロナ禍でお店がなくなってしまった。今は葉山で再開しているらしいが、このお店は自分の中で伝説のお店となった。
新旧が入り乱れ、淘汰されながら変化していて、まさに雑多な街だなぁ。
街の住人が思うこと
最近の再開発で、駅の二階にはキレイな店舗が並び、ボーナストラックや路線街、リロードやミカンなど、たくさんのトレンディな商業施設が増えた。下北沢にTSUTAYAのシェアラウンジができる日がくるなんて昔の自分が知ったらびっくりだ。
大規模な工事で街並みがさらに整備されることはきっと世の中的にはいいことなのだろう。
でもわたしは、どこかにすきまがある街が好きです。おもちゃ箱をひっくり返してそのまま固めたような下北沢が好きなんです。
ここがいつまでもビビットな色を放つ街でありますように。
そう杞憂しているうちに今日も下北沢では誰かの思い出が形成されていることだろう。
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