3ヶ月のニート期間を経て、社会人1年目で入社した会社は出版系の広告代理店です。ようやく広告の仕事ができることになりました。
そこにいたのは、グループ全体の野球大会に社員の選手名鑑をつくって全力で取り組む上司や、会社近くの飲み屋に連れてってくれる飲兵衛のあたたかいお姉さま、お兄さまなど。出版業界がイケイケだった頃から在籍するベテラン社員がほとんどです。
当時若者は少なく、昔ながらの体質ではありましたが、とてもアットホームな会社でした。
ワクワクと不安が混じった入社日。じゃあまずはこれを読んでみよう、と渡されたのはジャンプのような分厚いコミック誌です。いわゆる萌え萌え系です。
未経験からの挑戦。漫画やアニメについてお勉強
アニメの知識は皆無なので、まずは人気アニメのタイトルやあらすじを覚えるところから始めます。コミック誌は十種類以上あり、それぞれに特徴もあったりと、オタクの世界は奥深く、1週間ほどはアニメコミック誌をインプットする期間でした。
正直アニメには全然興味はなかったものの、新卒の会社をすぐに辞めて使えない状態で拾ってもらったという恩があります。一生懸命流行っているコンテンツについて勉強しました。
ストーリーでよくあるのは、一見冴えない男子学生が学園中のいろんな美少女から一斉にモテるという話です。当時は擬人化なども流行っていました。当時爆発的に流行っていたのは、船を美少女に擬人化したゲームです。
いろんな船をイメージした美少女のキャラクターがたくさんいて、戦いに敗れると洋服が少しはだけてハレンチな感じになるのです! 萌えの世界はなんとクリエイティブなのだろう、とわたしはとても衝撃を受けました。
営業一年生。意識したこと
任されたのはメディアレップと言って、アニメコミック誌の広告のスペースを売る仕事です。最初は先輩の営業に同行させてもらい、打ち合わせを聞きます。
お客さんは大手のゲーム会社やアニメの制作会社、レコード会社など。アニメが好きな人からすると、憧れのお仕事だと思います。最初は何の話をしているのか会話についていくこともおぼつかない状態で、打ち合わせが終わった後に、先輩に質問攻めをしていました。
少し慣れてきた頃、わたしは新規営業の担当になりました。当然ですが、新規営業は自分からアプローチして仕事を取りに行かないと自分の仕事がありません。スキルも経験もない社会人1年目なので、最初はあんまり期待されていなかったのだと思います。やる気だけが空回りしてしまい、すぐに取り組める仕事がない状態というのはつらかったです。
この時から「自分の居場所なんて元々ない。自分の場所は自分でつくらなきゃ」という意識が芽生え始めました。
余裕のあるベテランのおじさまたちに紛れて、若者がせせこましくがんばります。その頑張る姿はいい刺激になったと後々ありがたいお言葉をいただいたことがあります。
トライアンドエラーの営業を繰り返し、初めて新規で営業が取れたのは声優学校の広告でした。感動と感謝の極みです。ちなみにわたしは営業トークが全然うまくありません。気遣いも苦手で接客業などもまったく向かないタイプです・・。
一方、資料をつくるのは得意なので、資料をわかりやすくつくったり、お客さんからの要望や質問にきちんと答えるということを意識しました。
とにかく最初は一生懸命で、大きな提案の前には夜遅くまで作業する日もありましたが、あまり苦には思わずベストを尽くしたい一心で取り組んでいました。
大奮闘して成果が出た2,3年目
その効果があったのか、2,3年目くらいからとても大きな成果を出すことができました。自分もみんなもびっくりするくらいです。社長賞も受賞しました。
そう、当時は恋愛運は皆無でしたが、なぜか仕事運はべらぼうにあったのです!
これは持論ですが、チャンスはカジノのルーレットのようにころころと回っているんじゃないかと思っています。自分のところにチャンスがやってきた時に、「私に頂戴!」と我こそはと手を伸ばして掴める人にラッキーがやってくるのではないでしょうか。
その大事なタイミングを見極める力と、いつでも手を伸ばせるように準備をしておくこともすごく大事なことと思っています。頑張ることは当たり前です。みんな頑張っています。でも中には優しすぎる人はチャンスが回ってきた時に、例えば人から頼まれごとなどをされてしまうと、そちらを優先してタイミングを逃したりしてしまうんですね。
その時わたしはとってもガツガツしていました。早く正社員になりたかったので、ハングリー精神たっぷりです。もちろん自分の中では最大限に努力をしていましたが、チャンスのタイミングが来たときにがめつく掴みました。取引先の担当者の方との相性もよく、実力以上に運がよかったなと今でも思います。
モチベーションが高かった理由として、どこからか「仕事の報酬は仕事でもらえる」という話を聞き、今の仕事を頑張ればやりたい映画の仕事に近づけるのでは、という考えになっていたこともあります。
しかし、仕事を頑張れば頑張るほど、適性は今の仕事にあると思われてしまい、ますますメディアレップの仕事を期待されるようになりました。うーん、ジレンマです。
わたしは懲りずに、映画の仕事がしたいと言い続けました。そして、主張し続けてやらせてもらったお仕事があります。
夢のようなお仕事
2年くらい経った頃でしょうか、わたしは怖い映画が好きなのですが、中でもリングがとりわけ好きです。なんと、貞子の映画が上映された時に、舞台挨拶のお仕事に少しだけ携わらせてもらうことができたのです!
貞子さんは前髪が長いので、歩くときに前があまり見えません。そのため、貞子さんの手をとり、壇上にエスコートするというお仕事をやらせてもらうことができました。
後にも先にも、貞子さんをサポートできたことは自分の人生においてもっとも名誉あるお仕事です。
夢のようなお仕事を経て、また普段の業務に戻ります。
アニメに興味はないし大変だけれど、メディアレップのお仕事はやりがいを感じます。ずっと時を共にしていると、萌え萌え系のキャラクターにも愛着が湧いてきます。
翌年には後輩も入ってきて、チームワークの時代がやってきました。
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